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「お箸が苦手」の奥にある、子どもの成長の物語

子どもの「できないこと」に直面したとき、私たちはつい、その一点だけを修正しようと躍起になってしまいます。「お箸が上手に持てない」という悩みも、その一つかもしれません。しかし、その小さな指先に現れているのは、実はもっと大きな身体の物語の一部なのです。肩から肘へ、肘から手首へ、そして指先へと続く、見えない成長の道のり。この道を、遊び心と共に旅することができたなら、子どもの世界は、そして私たちの眼差しは、もっと豊かになるのかもしれません。


「うちの子、お箸を上手に持てなくて…」

これは、私が数えきれないほど耳にしてきた、親御さんたちの切実な悩みです。インターネット上にはたくさんの解決策が溢れていますが、今回は私たちが専門とする「エンタメ療育」の領域で、どのようにこの課題にアプローチし、楽しみながら成長を促していくか、その具体的な事例をお話ししたいと思います。

お箸が上手に使えない、ということは、多くの場合、指先の感覚がまだ十分に発達していない、あるいは動きがゆっくりであることの現れです。しかし、その原因をさらに深く探っていくと、問題は指先だけに留まりません。

指先を器用に動かすためには、まずその土台となる部分が安定している必要があります。指先の前に手首、手首の前に肘、そして肘の前には肩があります。そもそも、この肩周りをうまく使えていない状態で、いきなり指先だけを巧みに操ろうとするのは、非常に難しいことなのです。

そこで私たちのエンタメ療育では、無理に指先だけの練習を強いることはしません。まず、ゴムチューブのような道具を使って、遊びながら肩を回す動きを取り入れます。肩の可動域が広がったら、次は肩を固定して肘だけを動かす練習、それができるようになったら肘も固定して手首を動かす練習、というように、身体の大きな部分から小さな部分へと、感覚の成長を順番に促していくのです。

そして、いよいよ指先のトレーニングに進む段階で、特に効果的で子どもたちが夢中になるのが「洗濯バサミ」を使った遊びです。

ただ洗濯バサミをつまんで何かを挟むだけでも良い練習になりますが、私たちはそれをさらに発展させます。例えば、一つの洗濯バサミを土台にして、その上に次々と洗濯バサミを挟んでいき、タワーのように積み上げていくのです。

実は、私自身もお箸を持つのが得意ではありません。左利きで、持ち方も少し変わっています。だからこそ、この洗濯バサミタワーを作るときの難しさと面白さがよくわかります。バランスを取りながら、慎重に、でも遊び心を持って積み上げていく。この活動は、同じ場所に集中して力を加える訓練と、指先を繊細に使う訓練という、二つの動作を同時に行うことになります。

一見すると難しそうですが、「タワーを作る」という明確で楽しい目標があると、子どもたちは驚くほどの集中力を見せてくれます。何気ない遊びの時間が、いつの間にか身体の感覚を統合し、成長を促すための貴重なレッスンになるのです。

「できないこと」に直面したとき、私たちはつい焦り、最短距離の解決策を探してしまいます。しかし、子どもの成長は一直線ではありません。遠回りに見える「遊び」の中にこそ、その子自身のペースで、身体と心を育てていくためのヒントが隠されています。お箸が上手に持てないという悩みも、子どもの身体全体を見つめ直し、共に楽しみながら成長する機会と捉えることができるのです。

 
 
 

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