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「できた」を積み重ねる療育

8月9日
読了時間: 5分

子どもが何かを覚える瞬間には、目には見えない小さな階段があります。大人から見ると簡単に思える「ピンクを選ぶ」という行動も、子どもにとっては、見て、聞いて、理解して、選ぶといういくつもの段階を含んでいます。その階段を一段ずつ、安全に、楽しく上がれるようにすることが、療育の中でとても大切な関わりになります。


普段のラフダイの療育トレーニングの中で、うまくいった対応事例や成功事例をご紹介していければと思います。

今回は特別編として、ラフダイの療育理念の中でよく使われる手法・技法の一つである「ディスクリートトライアルトレーニング」について、簡単にお話しします。

普段のレッスンの中でも、先生たちにはこの考え方を常に意識しながら関わってもらっています。

ディスクリートトライアルトレーニングは、とても簡単に言うと、「子どもが成功しやすいように、学びを細かく分けて積み重ねていく方法」です。

療育の中では「スモールステップ」という言葉をよく使いますが、それをさらにもっと細分化した考え方だと思ってもらえるとわかりやすいかもしれません。

大切なのは、いきなり難しいことを求めないことです。

たとえば、ピンクのボールと青いボールがあるとします。

子どもに色の認知を入れたいとき、大人はつい最初から「ピンクはどっち?」と聞きたくなります。

でも、まだ色の理解が十分でない子に対して、いきなり二択を出してしまうと、最初からつまずいてしまうことがあります。

本人にとっては、何を見ればいいのか、何を基準に選べばいいのかがまだ整理されていない状態です。

だからこそ、まずはインプットから始めます。

「これはピンクです」

そう伝えたうえで、「ピンクにタッチしてみてね」と促します。

このとき大切なのは、子どもが必ず成功できるように、こちらがアプローチしてあげることです。

最初から正解を試すのではなく、正解できる状況を作る。

学ばせる前に、成功できる経験を設計する。


療育で大切なのは、できるかどうかを試すことではなく、できるようになる道筋を一緒につくることです。

実際の関わりでは、こんなふうに進めます。

「後から色を説明するよ。わかった色にタッチしてみてね」

「これはピンクです。ピンクにタッチ」

子どもがタッチできたら、「上手にできた」としっかり返します。

もう一度、同じように繰り返します。

「これはピンクです。ピンクにタッチ」

またできたら、しっかり成功として受け止めます。

そのあとで、少しだけ段階を上げます。

「これは何色ですか?」

そこで子どもが「ピンク」と言えたら、「正解」と返します。

このように、いきなり二択や判断を求めるのではなく、まずは一つの情報を確実に入れていきます。

そして、本人が「自分でできた」と感じられるようにしていきます。

この「自分でできた」という感覚がとても大切です。

スモールステップで進めるということは、ただ簡単な課題にするという意味ではありません。

判断材料を一つに絞り、そこから確実に二つ、三つへと増やしていくことです。

最初は一つだけ。

次に、もう一つ。

そして、少しずつ選択肢を増やしていく。

そうすることで、子どもは「できた」「わかった」「楽しい」「うれしい」という経験を連続して積んでいくことができます。

この連続が、自己肯定感につながります。

失敗ばかりが続くと、子どもは学びそのものを避けたくなってしまいます。

でも、成功できる形で課題が設計されていると、子どもは前向きに取り組みやすくなります。

「またやってみよう」と思える。

「自分にもできる」と感じられる。

その気持ちが、次の学びの土台になります。

たとえば、最初にピンクをしっかり理解できるようになったら、次に青を入れていきます。

「これは青だよ」

「こちらはピンクだよ」

「じゃあ、ピンクにタッチしてみてね」

この段階で、たとえ周りに少し気になるものがあったり、別の言葉が聞こえたりしても、子どもの中に「ピンク」という認知がしっかり入っていれば、自信を持って選ぶことができます。

その自信があるから、一つの認知として定着していきます。

そして、ピンクができたら青。

青ができたら、また違う色。

このように繰り返しながら、少しずつ理解を広げていきます。


小さな成功は、小さなまま終わりません。積み重なることで、子どもの中に「自分はできる」という大きな感覚を育てていきます。

ラフダイの普段のレッスンでも、このディスクリートトライアルトレーニングの考え方を主に取り入れながら進めています。

色の認知だけではありません。

物をあげる、渡す、受け取る、見る、待つ、選ぶ。

こうした日常の中の一つひとつの行動にも、同じ考え方が使えます。

大人にとっては自然に見える動作でも、子どもにとっては複数の理解や判断が必要なことがあります。

だからこそ、細かく分ける。

できるところから始める。

必ず成功できる形にして、少しずつ段階を上げる。

この流れを大切にしています。

療育は、子どもに「できないこと」を突きつける場ではありません。

子どもが「できた」と感じられる瞬間を、どれだけ丁寧につくっていけるか。

その積み重ねが、学びを楽しいものにしていきます。

そして、楽しいと感じられるからこそ、子どもは次のステップに進んでいけます。

普段の生活の中でも、「こういう時はどうしたらいいんだろう」と感じる場面はたくさんあると思います。

困り感は、家庭によっても、お子さんによっても違います。

でも、その困りごとの中には、細かく分けて見ていくことで関わり方が見えてくるものがあります。

いきなり大きな変化を目指さなくても大丈夫です。

まずは一段。

次に、もう一段。

子どもが安心して上がれる階段を、一緒に作っていくこと。

それが、療育の中で大切にしている関わりです。

何か困っていることや、「こういう時どうしたらいいんだろう」という場面がありましたら、いつでもご相談ください。

小さな成功を一つずつ重ねながら、その子に合った進み方を一緒に考えていければと思います。

 
 
 

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