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障害者雇用の場をつくるために、まず人に会いに行く

仕事は、机の上だけで生まれるものではないのだと思います。誰かに会いに行き、名前を覚えてもらい、「あ、あの時の」と声をかけられ、時にはよく分からないまま「手伝います」と返事をする。その小さな往復の中で、まだ形になっていなかった未来が、少しずつ仕事の輪郭を持ちはじめることがあります。


4月にラフ大ができてから、僕たちはずっと「仕事をつくる」ということに向き合っています。

ここで言う仕事づくりは、単に求人を探すことではありません。障害者雇用枠として働ける場所を、実際の企業とのつながりの中でつくっていくことです。働く人がいて、受け入れる企業がいて、その間に信頼が必要になる。

だからまず、交流から始めています。

南先生はいま、いろいろな交流会に顔を出しています。企業の方々、地域の方々、福祉に関わる方々、教育に関わる方々。そこに行くと、思いがけず声をかけられることがあります。

「あれ、あそこでもお会いしましたね」

「あの時はどうも」

下野新聞にラフ大が載った時もそうでした。

「あ、見ましたよ。あの方ですか」

YouTubeやInstagramで発信していることもあって、「YouTubeの人ですよね」と言われることもあります。もちろん、YouTubeの人ではないのですが、そう言われるくらいには、ラフ大という存在が少しずつ認知されてきているのだと感じます。

これはとても大きなことです。

何かを始めたばかりの頃は、自分たちの活動が本当に外に届いているのか分かりません。発信しても、動いても、会いに行っても、最初は手応えが見えにくい。

でも、ある時ふと、別の場所で名前を呼ばれる。

その瞬間に、「ああ、届いていたんだ」と分かるのです。

僕たちは、スペシャルオリンピックスのコーチをしたり、ネバーランドへワークショップに行ったりしながら、いろいろな場所で人と出会っています。それぞれの活動は一見ばらばらに見えるかもしれません。

でも、実際には全部つながっています。

福祉も、教育も、スポーツも、エンタメも、地域づくりも、人が生きる場所をつくるという意味では同じ地面の上にあります。どこかで会った人が、別の場所でまた現れる。そこでまた少し話す。すると、その人の中にこちらの存在が残っていく。


仕事は、突然生まれるのではなく、信頼が少しずつ積み重なった場所に現れる。

今年の3月には、株式会社コネクトができました。

そして8月には、指定が下りるであろう就労継続支援A型・B型の事業所に向けて、僕たちはさらに具体的に動き始めています。働く場所をつくるためには、制度だけでは足りません。人脈も、現場も、地域との関係も必要です。

そんな中で、ある大学の教授から声をかけていただきました。

「今度、秋に宇都宮で初めてオクトーバーフェストをやるんだ。南君、手伝ってくれないか」

南先生はすぐに返しました。

「もちろんです。ドイツビール大好きです。できることは何でもやりますよ」

こうして、オクトーバーフェストの運営委員に少し関わらせていただくことになりました。

とはいえ、もうすでに動き出している企画です。僕たちができるのは、中心に立つことではなく、必要なところを支えること。雑務でも、裏方でも、手が足りないところがあれば動く。

でも、こういう「雑務」こそ大事なのだと思います。

華やかな仕事だけが仕事ではありません。むしろ、信頼は目立たないところで生まれることが多い。誰かが困っている時に、すぐ動く。小さな約束を守る。名前の出ない仕事を丁寧にやる。

そういう積み重ねが、次の扉を開きます。

実際、そのオクトーバーフェストの運営委員のつながりから、すぐに次の電話がかかってきました。

「南さん、今ちょっとこういう案件があるんだけど、南さんしか無理だなと思って。お願いできないかな」

「なんですか?」

「宇都宮で、演劇っぽいイベントをやる人がいて、ちょっと手伝ってもらえないかな」

演劇と聞けば、僕たちにも関われる領域があります。ラフ大ではエンタメ領域の中で演劇にも取り組んでいますし、実際に役者もいます。僕自身も役者をやっていました。

困っている人がいて、自分たちに力になれることがあるなら、やってみよう。

そう思って、引き受けました。

電話を切ってから30分ほどで、担当の方から連絡が来ました。

「どうも、初恋タローと申します」

初恋タロー。

僕は昔、吉本興業にいたので、すぐに分かりました。

「あ、吉本の初恋タローさんですか?」

「そうです、そうです」

そこでまた、つながりました。

こういう瞬間は不思議です。まったく別の場所で動いていた線が、突然ひとつの点で交わる。オクトーバーフェストの話から、演劇の話になり、そこから吉本時代の記憶につながる。

人との縁は、こちらの計画通りには進みません。

でも、だからこそ面白い。

概要を聞いて電話を切った後、ひとつ分かったことがありました。

それは、全然「演劇のイベント」ではなかったということです。

コントライブでした。

「栃木コントすっぺ!」というコントライブに、南先生が出演することになりました。

間違った。

いや、間違ってはいないのかもしれません。

演劇だと思って受けた話が、コントライブだった。真面目に仕事づくりをしていたはずが、気づいたら舞台に立つことになっていた。だけど、これもまたラフ大らしい展開なのだと思います。

福祉の現場をつくることと、地域のイベントに関わること。

障害者雇用の場を広げることと、コントライブに出演すること。

一見すると遠いように見えます。でも、根っこではつながっています。どちらも、人が社会の中に居場所を持つための活動です。どちらも、街の中に関係性を増やしていくことです。


居場所は、建物だけでできるのではありません。人と人が「また会いましたね」と言える関係の中に生まれます。

ラフ大が目指しているのは、ただ支援の枠をつくることではありません。

誰かが働けるようになること。誰かが表現できるようになること。誰かが自分の役割を見つけられること。そして、その人を受け入れる地域の側にも、新しい出会いや可能性が生まれること。

そのためには、まず外に出るしかありません。

交流会に行く。声をかける。声をかけられる。新聞を見たと言われる。YouTubeの人ですよねと言われる。教授に呼ばれる。イベントを手伝う。知らない電話に出る。演劇だと思ったらコントだった。

その全部が、仕事づくりの一部なのです。

もちろん、まだ始まったばかりです。

株式会社コネクトも、これからです。就労継続支援A型・B型の事業所も、これから具体的に形になっていきます。企業との関係づくりも、地域とのつながりも、ひとつひとつ積み上げている段階です。

けれど最近、少しずつ感じています。

ラフ大は、街の中に入り始めている。

誰かの記憶に残り始めている。

そしてその記憶が、次の仕事や、次の舞台や、次の出会いを運んできてくれる。

だからこれからも、できることは何でもやっていきたいと思います。雑務でも、裏方でも、舞台でも、コントでも、地域の誰かが「ちょっと手伝ってほしい」と言ってくれるなら、そこに行く。

仕事は、そうやって生まれるのだと思います。

誰かの困りごとに手を伸ばした先に、まだ見ぬ働く場所がある。何気ない電話の向こうに、未来の仲間がいる。間違って引き受けたコントライブの中にさえ、街とつながる入口がある。

ラフ大は、今日もその入口をひとつずつ開けています。


 
 
 

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