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楽しい療育の裏側にある、静かな設計図

子どもの成長は、まっすぐな線では進みません。できるようになったことがある一方で、新しい環境に入った途端に別の課題が見えてくることもあります。だからこそ、支援には「走り続ける力」だけでなく、ときどき立ち止まり、今どこにいるのかを一緒に確かめる時間が必要です。


モニタリングは、成長の現在地を確認する時間

福祉の事業所では、「モニタリング」という時間を大切にしています。

モニタリングと聞くと、バラエティ番組の「人間観察モニタリング」を思い浮かべる方もいるかもしれません。実は私もあの番組が好きです。

でも、療育や福祉の現場で行うモニタリングは、誰かを観察して驚かせるためのものではありません。

子どもの成長の途中経過を、保護者様と一緒に丁寧に確認していくための時間です。

前回お話ししたように、療育が始まる前には「個別支援計画」を立てます。

その計画には、目標や達成時期を明記します。

たとえば、「半年後にここまでを目指しましょう」「この力を少しずつ育てていきましょう」というように、その子に合わせた支援の方向性を決めていきます。

そして実際にレッスンが始まります。

未就学のお子さんであれば、だいたい3ヶ月ごと。小学生以上でも、最低でも6ヶ月に1回はモニタリングを行います。

半年が経ったときに、最初に立てた支援計画を見返します。

ここは達成できたのか。

新しい課題は見つかったのか。

まだ少し時間をかけて育てていく必要がある部分はどこなのか。

そうしたことを、保護者様と一緒に確認していきます。


支援計画は、作って終わりではありません。子どもの成長に合わせて、何度も見直されていくものです。

モニタリングの時間では、「ここはできるようになりましたね」と確認することもあります。

一方で、「ここは新しい課題として出てきましたね」と話すこともあります。

また、「ここはまだゆっくりなペースで成長していますね。では次はこういう支援にしていきましょう」と、次の計画につなげていくこともあります。

つまりモニタリングは、支援の振り返りであり、次の成長に向けた作戦会議でもあります。

普段のレッスンの中でも、私たちは保護者様とお話しする機会が多くあります。

毎回のレッスン後にフィードバックをしたり、その日の様子を共有したりします。

ある意味では、日々の中で小さなモニタリングを重ねているとも言えます。

それでも、あえて正式なモニタリングの時間を設けることには大きな意味があります。

日々の会話だけでは流れてしまうことを、支援計画に照らし合わせながら、きちんと確認できるからです。

いま何ができるようになっているのか。

どこにまだ支援が必要なのか。

家庭や学校、園で新しく出てきた困りごとはないか。

そうしたことを整理することで、支援の質が上がっていきます。

特に子どもたちは、環境の変化によって見える課題が変わります。

学年が上がったタイミングで、新しい集団生活の難しさが出てくることもあります。

学校行事に向けて、今までとは違う力が必要になることもあります。

運動会、発表会、遠足、宿泊行事。

そういった節目の中で、「こういうことをできるようになっておきたい」「ここに不安がある」という声が保護者様から出てくることがあります。

モニタリングは、その声をしっかりと受け取るための貴重なタッチポイントです。

私たち支援者だけが見ている子どもの姿があります。

一方で、保護者様だからこそ見えている姿もあります。

園や学校だからこそ見える姿もあります。

その情報を合わせていくことで、子どもの現在地がより立体的に見えてきます。

そして現在地が見えるからこそ、次にどこへ向かうのかを決めることができます。


子どもの成長を支えるためには、前に進むことと同じくらい、立ち止まって見直すことが大切です。

モニタリングをしっかり行うことで、子どもの成長スピードは確実に上がっていきます。

それは、無理やり急がせるという意味ではありません。

その子にとって必要な支援を、必要なタイミングで届けやすくなるということです。

逆に、モニタリングがないまま進んでしまうと、支援する側も「これは何のためにやっているんだろう」と見失ってしまうことがあります。

レッスンが単発的になってしまう。

その場その場の対応だけになってしまう。

子どもの未来につながる積み重ねではなく、ただ目の前の時間をこなすだけになってしまう。

それは、とてももったいないことです。

だから私たちは、個別支援計画を立て、レッスンを行い、モニタリングを行います。

そしてその内容をもとに、また次の個別支援計画の原案を作ります。

その後、スタッフみんなでカンファレンスを行います。

この計画で本当に良いのか。

この目標はその子に合っているのか。

次の半年で何を大切に支援していくべきなのか。

そうやって話し合い、最終的な支援計画を作成します。

そして保護者様に確認していただき、サインをいただき、また次の半年が始まります。

この繰り返しです。

いわゆるPDCAサイクルとも言えるかもしれません。

計画を立てる。

実行する。

振り返る。

改善する。

この流れを、子どもの成長に合わせて丁寧に回していきます。

療育は、短期的に何かをやって終わりではありません。

もちろん、毎回のレッスンが楽しいことはとても大切です。

子どもたちが「また行きたい」と思えること。

笑顔で体を動かせること。

先生や友達との関わりの中で、自信を少しずつ育てていけること。

それは療育の土台です。

でも、その楽しい時間の裏側には、中長期的な支援計画があります。

半年後、1年後、もっと先の未来に向かって、今このレッスンで何を積み重ねているのか。

その視点を持ちながら、毎日の一つひとつを大切にしています。

外から見ると、「ウェーイ、楽しい!」という雰囲気でレッスンをしているように見えるかもしれません。

実際、楽しくやっています。

子どもたちが笑って、挑戦して、できたことを喜べる空間を大事にしています。

でも、その奥ではしっかりと計画を立て、見直し、話し合い、次につなげています。

楽しいだけでは終わらせない。

でも、堅苦しいだけにもならない。

そのバランスの中で、子どもたちの成長を支えていくのが、私たちの療育です。

モニタリングは、そのための大切な節目です。

子どもがどこまで来たのかを一緒に喜び、まだ難しいところを一緒に受け止め、次に向かう道を一緒に描く時間です。

支援とは、ただ前へ進ませることではありません。

ときどき立ち止まり、足元を見て、進む方向を確かめることでもあります。

その確認があるからこそ、毎日の小さな一歩が、未来へつながる確かな積み重ねになっていくのです。

 
 
 

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