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演劇療育でのオーディションが教えてくれた、自己発信の力

誰かに選ばれる場面では、能力だけでなく、「私はここで何をしたいのか」を自分の言葉で伝える力が問われます。けれど、その力は最初から上手にできる人だけのものではありません。緊張して、言葉が詰まって、それでも少しずつ前に出てみる。その積み重ねの中で、熱意はただの気持ちから、相手に届く考えへと変わっていきます。


就職に向けた自己発信について、最近あらためて考える機会がありました。

先日、外資系企業の障害者雇用に関する勉強会に参加しました。そこで印象に残ったのは、やはり「発信すること」の大切さでした。ただ準備をするだけではなく、緊張感を持って、自分の考えを相手に伝えること。その重要性を強く感じました。

もうひとつ、人事の方の言葉で心に残っていることがあります。

採用するかしないかを考えるとき、もちろんスキルや条件も見られます。でもそれ以前に、その人に熱意があるか。そして、自分なりの考え方を持っているか。そこがとても大事だという話でした。

つまり、「働きたいです」だけでは足りないのかもしれません。

自分はなぜ働きたいのか。どんなことをやりたいのか。どんなふうになりたいのか。どんなことに挑戦してみたいのか。

そうした意思を持ち、それを熱意として、さらに考えとして伝えることが求められているのだと思いました。


熱意は、心の中にあるだけでは相手に届かない。言葉にして、態度にして、初めて伝わるものになる。

この学びを、トレーニングの中でも実践してみたいと思いました。

そこで、レッスンの中で「オーディション形式」の活動を取り入れてみました。演劇のルールを使って、ある役を勝ち取るために、自分をアピールしてみるというものです。

「この役に選ばれるためには、どう伝えたらいいだろう」

「自分の強みをどう生かせるだろう」

「自分はどういう人間なのかを、どう表現できるだろう」

そういう問いを持ちながら、子どもたちに挑戦してもらいました。

すると、想像以上の反応がありました。

子どもたちは、こちらが思っている以上によく状況を見ています。オーディションという形式になると、ただ発表するだけではなく、「選ばれるために伝える」という緊張感が生まれます。その瞬間、ぐっと気持ちが入る子がいました。

普段はあまり言葉が出ない子が、一生懸命に自分を出そうとする姿もありました。うまく話せたかどうかだけではありません。自分の中にあるものを、なんとか外に出してみようとする。その姿勢そのものが、とても大きな一歩でした。

私はその場面を見て、確信に近いものを感じました。

自分の熱意や考え方を発信する力は、練習によって身につけられる。

これは、生まれつき話すのが得意な人だけのものではありません。最初から堂々と自己アピールできる人だけが持っている才能でもありません。緊張感のある場面を経験し、その中で自分の言葉を探し、少しずつ伝える練習をすることで、育っていく力なのだと思います。

就職活動でも、面接でも、日々のコミュニケーションでも、私たちは何度も「自分を伝える」場面に出会います。

そのときに大事なのは、完璧な言葉を用意することだけではないのかもしれません。むしろ、自分が何を大切にしているのか、何に向かいたいのかを、自分の中で少しずつ明確にしていくこと。そして、それを相手に渡す練習を重ねていくことです。

オーディションのような場には、適度な緊張感があります。誰かが見ている。選ばれるかもしれないし、選ばれないかもしれない。その中で、自分の強みを生かして、言葉や態度で表現していく。

これは、働くための準備にもつながっていると感じます。

働くということは、ただ業務をこなすことだけではありません。自分は何に関心があり、どんな役割を担いたいのか。どんなふうにチームや社会に関わっていきたいのか。それを自分の中に持ち、必要な場面で伝えられることも、働く力の一部です。


「選ばれる力」とは、自分を大きく見せる力ではなく、自分の本当の意思を相手に届く形にする力なのだと思う。

だからこそ、これからもトレーニングの中で、オーディションのような活動を取り入れていきたいと思っています。

誰かがいる中で、自分を発信してみる。緊張しながらでも、考えを伝えてみる。自分の強みを見つけ、それをどう表現するかを試してみる。

そうした経験を重ねることで、子どもたちは少しずつ「自分はこういう人間です」と言えるようになっていくはずです。


そしてそれは、就職に向かう人にとっても同じです。

熱意があること。考え方を持っていること。そして、それを伝えようとすること。

この三つは、最初から完成していなくてもいいのだと思います。むしろ、トレーニングの中で磨いていくものです。緊張してもいい。言葉に詰まってもいい。それでも、自分の中にある意思を外に出してみることから始まります。

働きたいという気持ちは、ただ胸の中にしまっておくだけではなく、相手に届く形にしていく必要があります。

そのために、練習する。場をつくる。挑戦する。

オーディションの場で見えた子どもたちの表情は、その可能性を教えてくれました。自分を伝える力は育つ。熱意は言葉になる。考えは、練習によって相手に届くものになる。

だから、これからもやっていきたいと思います。

緊張感のある場で、自分を出してみること。自分の言葉で、やりたいことを伝えてみること。選ばれるために自分を飾るのではなく、自分の意思をまっすぐ届けること。

そこから、働く力も、生きる力も、少しずつ育っていくのだと思います。

 
 
 

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