top of page
検索

知られていないことは、壁ではなく入口だった

何かを広げたいとき、必要なのは完璧な計画よりも、思い切って新しい場所に身を置くことなのかもしれません。知らない人たちの輪の中に入り、自分たちが何をしているのかを話してみる。すると、思っていた以上に多くの人がまだその世界を知らなくて、そこにこそ、次の扉があるのだと気づく瞬間があります。


今年、私は40歳になります。

その節目を前にして、ひとつ新しい場所に飛び込むことにしました。日本各地にある青年会議所です。40歳までしか参加できない団体ということもあり、私にとっては本当に最後のタイミングでした。

たった一年だけかもしれない。

それでも、その一年に身を置いてみようと思いました。

実際に参加してみると、想像していた以上にいろいろな動きが生まれています。正直、やることは一気に増えました。慣れない場もありますし、時間の使い方も考え直さなければいけません。

けれど同時に、私自身にとっても、そして私たちが取り組んでいるラフダイにとっても、とてもいい流れが来ていると感じています。

一番大きいのは、人とのつながりです。

地域の経営者、企業の方々、これまでなかなか接点のなかった人たちとの交流が一気に増えました。名刺を交換し、話をし、自分が何をしているのかを説明する機会が増えていく。

その中で改めて感じたのは、私たちの業界や取り組みは、まだまだ知られていないということでした。

障害のある方や、精神的な不調を抱える方たちの就労について。療育やトレーニングの先にある「働く」ということについて。企業で働くこと、社会とつながること、そのためにどんな支援や準備が必要なのかについて。

私たちにとっては日々向き合っているテーマでも、外の世界から見ると、まだ十分に伝わっていない。

最初は、そのことに少し驚きました。

けれどすぐに、これは壁ではなくチャンスだと思いました。

知られていないということは、可能性がないということではありません。むしろ、まだ出会っていないだけです。まだ説明されていないだけです。まだ、実際に触れる機会がなかっただけなのだと思います。

だからこそ、こちらから話していく必要がある。

「こういうことをやっています」

「こういう人たちがいます」

「こういう形で働くことができます」

「企業さんと一緒にできることがあります」

そうやって一つひとつ伝えていくことで、相手の中に小さな理解が生まれる。その理解が、いつか「それなら一緒にやってみようかな」という行動につながるかもしれません。

私たちが今、ラフダイとして大切にしていることのひとつは、「働くをつくる」ということです。

ただ働く場所を探すだけではありません。本人に合った形で、社会とつながる道をつくること。安心して挑戦できる環境をつくること。そして、企業や地域の人たちにも、その可能性を一緒に見てもらうことです。

就労のゴールは、企業で働くことや、社会の中で役割を持つことにあります。

でも、そのゴールに向かうためには、支援する側だけが頑張っていても足りません。受け入れる側である企業や経営者の方々とのつながりが必要です。理解が必要です。そして何より、実際に顔の見える関係が必要です。

今回、青年会議所に入ったことで、その横のつながりが生まれ始めています。

これは本当に大きいことです。

福祉や支援の世界の中だけで考えていると、どうしても同じ言葉、同じ課題、同じ関係性の中で話が進んでいきます。もちろんそれも大切です。専門性も、日々の積み重ねも、現場の丁寧さも欠かせません。

でも、就労というテーマは、最終的には社会全体につながっていくものです。

だからこそ、外に出る必要がある。

企業の人たちと話す必要がある。経営者の方々に、こちらの現場で起きていることを伝える必要がある。そして同時に、私たちも企業側の考え方や不安、現実を知る必要があります。

支援とは、一方通行ではありません。

働く場所をつくるということは、本人と支援者と企業と地域が、少しずつ同じ方向を向いていくことなのだと思います。

もちろん、簡単なことではありません。

精神保健や福祉の活動を続けながら、新しいつながりをつくり、そこから実際の就労や協力の形にまでつなげていく。それは本当に大変です。やることも多いし、時間もエネルギーも必要です。

それでも、今はやる価値があると感じています。

なぜなら、出会う人たちの多くが、まだ知らないだけだからです。

知らないから距離がある。知らないから不安がある。知らないから、どう関わればいいかわからない。

でも、知れば変わるかもしれない。

実際に話を聞いて、「そういうことならできるかもしれない」と思ってくれる人がいるかもしれない。自分の会社で何かできることはないかと考えてくれる経営者がいるかもしれない。

その可能性を、私は今とても強く感じています。

知られていないことは、可能性がないということではない。まだ出会っていないだけなのだ。

この一年は、私にとってもひとつの節目になります。

40歳という区切りの年に、青年会議所という新しいコミュニティに入り、地域の人たちとつながりながら、自分たちの取り組みを伝えていく。その中で、ラフダイの活動も、就労支援の可能性も、少しずつ外へ広がっていくかもしれません。

まだ始まったばかりです。

でも、すでに流れは生まれています。

これまで届かなかった場所に言葉を届けること。まだ出会っていない人たちに、私たちの活動を知ってもらうこと。そして、働くことに向かう人たちのために、地域の中に新しい選択肢をつくっていくこと。

大変です。

でも、大変だからこそ意味があるのだと思います。

最後の一年に飛び込んだこの場所で、私は改めて感じています。働くをつくるためには、人とのつながりをつくることから始まるのだと。

そして、そのつながりの先に、きっとまだ見えていない未来がある。

 
 
 

最新記事

すべて表示
エンタメ就労支援で見えた、心と体のヘルプサイン

人生には、アクセルを踏み込みたい気持ちと、まだ体が追いついていない現実との間に、静かな葛藤が生まれる瞬間があります。心は未来へ向かって走り出しているのに、足はまだ昨日の場所に根を下ろしているような感覚。それはまるで、長い間止まっていた車を再び動かそうとするとき、エンジンはかかってもタイヤがすぐには回らない、あの感じに似ています。私たちの支援の現場で最近、まさにそんな瞬間がありました。それは、一人の

 
 
 
地域イベントがひらく福祉とエンタメ療育の架け橋

人は、知らないものを怖がる。けれど、光の当たる場所で踊る誰かを見ると、怖さは少しずつ形を失っていく。鹿沼の春、ステージの上で子どもたちの目がまっすぐに光ったとき、理解は理屈ではなく体験から始まるのだと、私ははっきり知った。 栃木県鹿沼市には、春のさつき祭りと秋の秋祭りという二つの大きな祭りがある。私たちはこの春、さつき祭りの「野外ステージ」と「室内ステージ」という二つの会場で、ラフダイダンスのパフ

 
 
 
楽しい療育の裏側にある、静かな設計図

子どもの成長は、まっすぐな線では進みません。できるようになったことがある一方で、新しい環境に入った途端に別の課題が見えてくることもあります。だからこそ、支援には「走り続ける力」だけでなく、ときどき立ち止まり、今どこにいるのかを一緒に確かめる時間が必要です。 モニタリングは、成長の現在地を確認する時間 福祉の事業所では、「モニタリング」という時間を大切にしています。 モニタリングと聞くと、バラエティ

 
 
 

コメント


bottom of page