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福祉事業所の新たな取り組みから雇用創出へ

9月2日
読了時間: 4分

何か新しいことを始めるとき、いちばん目立つのは完成した姿です。かわいいメニュー表、車の前に集まる子どもたち、手渡される温かい食べ物。でも本当は、その手前に静かな準備の時間があります。勉強して、講習を受けて、許可を取り、ひとつずつ「ちゃんと始める」ための土台を整えていく時間です。


キッチンカーをやります、と言っても、思いついたその日にいきなり始められるわけではありません。

食べ物を扱うということは、人の体に入るものを届けるということです。だから当然、きちんとした資格や許可が必要になります。どんなに気持ちがあっても、どんなに楽しそうなアイデアがあっても、「やりたい」だけでは始められない世界があります。

日々の業務がある中で、少しずつ勉強をしました。

講習を受け、テストを受け、必要な手続きを進めていく。派手なことではありません。誰かに大きく褒められるような場面でもありません。でも、こういう地味な積み重ねこそが、新しい挑戦を現実にしていくのだと思います。

そして無事に、食品衛生管理者の資格証が届きました。

その一枚を手にしたとき、ただ資格を取ったというより、「ここから本当に始まっていくんだ」という感覚がありました。夢や構想だったものが、少しずつ形を持ちはじめる瞬間です。


もちろん、それだけでは終わりません。

キッチンカーは、どんな車でもいいわけではありません。見た目がかわいいとか、使いやすそうだとか、そういうことだけで決められるものでもない。保健所に見てもらい、この設備なら大丈夫ですね、と確認していただく必要があります。

水回りはどうなっているのか。衛生面はきちんと保たれるのか。食品を安全に提供できる環境になっているのか。

そうした一つひとつの確認を経て、ようやく営業許可証をいただくことができます。よく飲食店の壁に貼られている、あの許可証です。普段は何気なく見ているものですが、自分が受け取る側になると、その重みが少し違って見えます。

許可証は、ただの紙ではありません。

それは「安心して届けていいですよ」という証であり、「責任を持って始めなさい」という約束でもあります。

準備は、少しずつ進んでいきました。

型もできてきました。メニュー表も作成しました。見ているだけで少し楽しくなるような、かわいいものにしたいと思っています。子どもたちが目を輝かせて選べるようなもの。親御さんが安心して見守れるようなもの。手に取る前から、少し気持ちが明るくなるようなもの。

メニュー表を作っていると、不思議なことに、そこに並ぶ文字の向こう側に人の顔が浮かんできます。

「これが好きかな」

「これを見たら喜ぶかな」

「今日はどんな気持ちで来てくれるかな」

ただ商品名を並べているだけではないのです。そこには、これから出会う人たちとの小さな会話がもう始まっているような気がします。

キッチンカーは、ただ物を運ぶ車ではありません。

もちろん、食べ物を運びます。道具も運びます。材料も運びます。けれど本当に運びたいものは、それだけではありません。

子どもたちの楽しさを運びたい。

親御様にとっての、ちょっとした機会を運びたい。

そこに来てくれた人が、「来てよかったな」と思えるような時間を運びたい。

キッチンカーというのは、場所を移動できる小さなお店です。でも、その移動できるという性質は、単なる便利さ以上の意味を持っていると思います。こちらから会いに行ける。こちらから場を作りに行ける。待っているだけでは届かなかった人のところへ、楽しさを持っていける。

それは、とても小さいけれど、大切なことです。

日常の中に、少しだけ特別な瞬間が生まれることがあります。子どもがメニュー表を見て迷う時間。親御さんがその姿を見て微笑む時間。食べ物を受け取る短いやりとりの中で、ふっと空気がやわらかくなる時間。

そういう時間を、丁寧につくっていきたいのです。


新しいことを始めるとき、どうしても目に見える華やかな部分に心が向きます。完成した車、かわいいメニュー、にぎやかな景色。でも、その下には必ず、見えない準備があります。勉強があり、確認があり、許可があり、責任があります。

その一つひとつをちゃんと通ってきたからこそ、胸を張って始められるのだと思います。

楽しい場所をつくるためには、見えないところで誠実でいる必要があります。

これから、このキッチンカーがどんな場所へ行き、どんな人たちと出会うのかはまだわかりません。でも、ひとつだけ決めていることがあります。

ただ売るために動くのではなく、誰かの一日が少し明るくなるように動くこと。

食べ物だけではなく、楽しさを。便利さだけではなく、安心を。小さなお店の形をしたこの車で、来てくれた人が幸せになれるような運営をしていきたいと思います。


キッチンカーは、ただ物を運ぶものではありません。

これから運んでいきたいのは、子どもたちの笑顔であり、親御様の喜びであり、その場に生まれる小さな幸せです。

 
 
 

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