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私たちの療育スキルを、誰かの明るさに変える

誰かの表情が少し明るくなる瞬間に立ち会うと、自分たちが持っているものの意味が変わることがあります。それは特別な言葉ではなく、難しい支援でもなく、ただ一緒に体を動かす時間の中で起こることもある。月に一度、鹿沼の児童養護施設で子どもたちと踊っていると、ダンスは単なる技術ではなく、心と心をつなぐ小さな橋なのだと感じます。


普段のトレーニングや活動の中で、私たちはいろいろな形でダンスと向き合っています。教えること、踊ること、見せること、そして誰かと一緒に楽しむこと。

前回は、スペシャルオリンピックスのコーチをしていることについてお伝えしました。実は、それ以外にも続けている取り組みがあります。

月に一度、鹿沼にある児童養護施設「ネバーランド」へ行き、無料のダンスワークショップを行っています。

この活動を始めて、もう4年ほどになります。ご縁があって通うようになり、毎月子どもたちと一緒に踊り、秋には収穫祭というお祭りでダンスを披露する機会もあります。

最初は、私たちの持っているダンスのスキルを、もっといろいろな人とシェアできたらいいなという思いからでした。

でも続けていくうちに、これは単に「教える」「習う」という時間ではないのだと感じるようになりました。

ダンスは、自分で踊っても楽しいし、誰かに見てもらうのも楽しいものです。けれど、それだけではありません。

ダンスを通して、心と心の交流が生まれることがあります。

言葉にしづらい気持ちも、体を動かすことで少し外に出てくる。緊張していた表情がゆるんだり、遠慮がちだった子が少しずつ前に出てきたりする。

そういう変化を、毎月のように見せてもらっています。

ネバーランドには、2歳くらいの小さな子から高校生くらいの子まで、さまざまな年齢の子どもたちがいます。

4年前、「こんなに小さい子が来たんだ、かわいいな」と思って見ていた子が、気づけば今年はすっかりお姉さんのようになっていました。体も大きくなり、表情も明るくなり、踊る姿にも自信が出ている。

毎月会っているからこそ、その変化がよくわかります。

一度きりのイベントでは見えないものが、続けていると見えてくるのです。

もちろん、毎回同じ顔ぶれというわけではありません。行くたびに「あれ、前回はいなかったな」という新しい子がいることもあります。

ある時、「今日からなんです」という子がいました。

その子は、少し不安そうな表情をしていました。新しい場所、新しい人たち、新しい生活。その中で急にダンスの時間に入るのだから、当然かもしれません。

最初は少し硬い様子でした。

でもレッスンをしていく中で、少しずつ体が動き始め、表情も変わっていきました。大きな変化ではないかもしれません。でも、ほんの少し気持ちが明るくなっていくように見えたのです。

そして次の月に行ってみると、その子が前の方で楽しそうに踊っていました。

それだけではありません。たくさん話しかけてくれたのです。

「この1ヶ月、このダンス練習してたんだ」

「先生、ちょっと見てよ」

「このステップ、できるようになったよ」

そんなふうに声をかけてくれました。

その瞬間、胸の奥がじんわり温かくなりました。

私たちが届けているものは、完璧な振り付けや技術だけではないのだと思います。もちろん、上手になることも大切です。でもそれ以上に、「できた」「見てほしい」「もっとやってみたい」という気持ちが生まれること。

その気持ちが、その子の中で小さな自信になること。

そこに、ダンスの大きな力があるのだと思います。


ダンスは、言葉より先に心を動かすことがある。

児童養護施設にいる子どもたちが、それぞれどんな背景を持っているのか、私たちがすべてを知ることはできません。

だからこそ、こちらが勝手に何かを決めつけるのではなく、その日その場で一緒に踊ることを大切にしています。

楽しく踊る。笑う。できたことを一緒に喜ぶ。秋の収穫祭に向けて練習する。

そういう積み重ねの中で、少しずつ関係ができていきます。

月に一度という小さな頻度でも、4年続けると、そこには確かな時間が積み重なります。

子どもたちの成長を見られること。新しく来た子が少しずつ場になじんでいく姿に立ち会えること。以前は後ろにいた子が、前で堂々と踊るようになること。

それは、私たちにとっても大きな学びです。


自分たちのスキルは、誰かと分かち合った時に、はじめて別の意味を持ちはじめる。

普段の活動の中では、トレーニングやレッスン、イベント出演など、さまざまな形でダンスに関わっています。けれど、こうした地域との交流やボランティアも、私たちにとってとても大切な取り組みです。

自分たちが持っている資源を、必要としている場所や人たちとシェアしていく。

それは、大げさなことではないのかもしれません。できることを、できる形で、続けていくこと。

私たちの場合、それがダンスでした。

鹿沼のネバーランドで、月に一度、子どもたちと踊る時間。秋の収穫祭に向けて、少しずつステップを重ねていく時間。

その中で、子どもたちの心が少し元気になったり、明るくなったり、自信を持てるようになったりする。

それを感じられることが、何より嬉しいのです。

ダンスは、舞台の上だけにあるものではありません。特別な人だけのものでもありません。

誰かと一緒に音に乗り、体を動かし、笑い合う。その時間の中に、ちゃんと人と人とのつながりが生まれる。

月に一度の小さなワークショップかもしれません。

でも、その小さな時間が、ある子にとって「見てほしい」と言える場所になったり、「できた」と思える経験になったりするなら、それはとても大きな意味を持つのだと思います。

これからも、私たちの持っているものを、地域の中で少しずつ分かち合っていきたい。

そしてまた来月も、子どもたちの前で音楽をかけて、一緒に踊る。

その一歩一歩のステップの先に、きっと心が明るくなる瞬間が待っていると信じています。

 
 
 

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