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スモールステップで「これができた!」へ導く

「できない」という壁

誰にでも、挑戦する前から「どうせ自分には無理だ」と諦めてしまった経験があるのではないでしょうか。高くそびえ立つ壁を前にして、最初の一歩を踏み出すことすら億劫になる。特に子供の頃に感じた「できなかった」という無力感は、心の奥深くに残り、やがて「やりたくない」という固い扉になってしまうことがあります。しかし、もしその壁が、実は小さな階段の集まりだとしたら?一段ずつなら、登れるかもしれないと思いませんか。


なぜ、私たちは運動が嫌いになるのか

「うちの子、運動が苦手で…」という悩みは、多くの親が抱えるものです。では、生まれつき運動が嫌いな子供はいるのでしょうか。私は、そうは思いません。生まれた瞬間から走ることや跳ぶことを拒絶する赤ちゃんはいません。では、いつから、そしてなぜ、運動に対する苦手意識が芽生えるのでしょう。

その答えは、とてもシンプルです。それは「できなかった」「失敗してしまった」という体験の積み重ねにあります。逆上がりに何度も挑戦して、手のひらの皮がむけてもできなかった記憶。ドッジボールで最後までうまくボールをキャッチできず、当てられてしまった悔しさ。そうした小さなつまずきが重なることで、「どうせ僕にはできないし、やりたくない」という自己防衛的な諦めが生まれてしまうのです。


「できた!」という小さな光を灯す

だからこそ、私たちは毎回のレッスンで、何よりも「今日はこれができたね」という成功体験を本人と一緒に見つけることを大切にしています。どんなに小さなことでも構いません。昨日よりほんの少し長く鉄棒にぶら下がれたこと、ボールを少し遠くまで投げられたこと。その一つひとつの「できた」が、子供の心に自信という名の小さな光を灯します。

しかし、これは言うほど簡単なことではありません。大人はつい、できていない部分、つまり「課題」に目を向けてしまいます。そして、その課題を克服するために、ひたすら同じ練習を繰り返させようとします。でも、それでは多くの場合、子供はさらに「できない」という壁にぶつかり、意欲を失ってしまうのです。


大きなゴールへの小さな階段

ここで重要になるのが、「スモールステップ」という考え方です。例えば、「逆上がりができるようになる」という大きなゴールがあるとします。そのゴールだけを目指してがむしゃらに練習するのではなく、その動きを細かく分解していくのです。

まず、鉄棒にぶら下がる力は十分か。次に、お腹を鉄棒に引きつける動きはできるか。そして、足を振り上げるタイミングはつかめているか。このように動きを細分化し、「ステップ1」「ステップ2」と小さな目標を設定します。一つひとつのステップをクリアしていくことで、子供は着実に成功体験を積み重ねていけます。そして気づいた時には、あれほど高く見えた「逆上がり」というゴールにたどり着いているのです。

このアプローチには、二つの重要な力が必要です。一つは、指導者が見せる「観察のスキル」。その子がいま、どこでつまずいているのかを正確に見極める目。そしてもう一つは、そのつまずきに対して、どのような小さなステップを用意すれば乗り越えられるかを考え、積み重ねていく「課題設定の力」です。私たちは、すべての課題に対して、このスモールステップの考え方を用いて、一人ひとりの歩みを支えています。


できないことの、その先へ

子供たちが運動を通して学ぶのは、単なる技術だけではありません。「できない」と感じた壁も、分解して、一つずつ乗り越えていけば、いつか必ずたどり着けるのだということ。その過程で得た「自分にもできた」という感覚は、運動以外の場面でも、彼らが困難に立ち向かうための、かけがえのない力になるはずです。大きな壁は、小さな階段の集まりでできている。そのことを知っていれば、私たちはどんな壁も恐れることなく、次の一歩を踏み出すことができるのです。

 
 
 

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