top of page
検索

ラフダイで見えた、家庭まで届く療育の力

子どもが自分から何かを始める瞬間には、小さな火が灯るような美しさがあります。誰かに言われたからではなく、「やりたい」と思ったから体が動く。その火は、ときにダンスの動画をもう一度見たいという気持ちから始まり、宿題を終わらせる力にまで変わっていきます。

「やりたい」が子どもを動かす瞬間

ラフダイでは、普段のトレーニングの中でダンス療育を行っています。

レッスンにはさまざまなプログラムがありますが、その中でも大切にしているもののひとつが「振り付けトレーニング」です。いわゆる振り付けダンスの練習で、だいたい三ヶ月に一回ほど新しいダンスが入り、それを練習し、最後に発表するという流れがあります。

この振り付けダンスには、たくさんの療育的な要素が含まれています。

体の使い方。

リズム感。

相手との距離感。

コミュニケーション。

人前で表現する経験。

どれも子どもたちにとって大切な学びです。

でも、振り付けトレーニングの一番の良さは、もっとシンプルなところにあると思っています。

好きな曲で踊れること。

キャッチーな曲で楽しく踊れること。

楽しいから、もっと上手に踊りたくなること。

発表する場所があるから、誰かに見せたくなること。

そして、見せたいから練習したくなること。

この流れの中に、主体性を育む大きな力があります。

主体性というと、少し難しい言葉に聞こえるかもしれません。自分で考えて、自分で決めて、自分から行動する力。もちろん、それはとても大切な力です。

ただ、子どもたちにいきなり「主体的になりなさい」と言っても、それだけで育つものではありません。

主体性は、命令からは生まれにくい。

けれど「好き」や「楽しい」の中からは、自然に芽を出すことがあります。

先日、あるお父様からご連絡をいただきました。

「うちの子、ラフダイに通うようになってから、家でYouTubeのダンス動画を見て、すごく練習するようになったんですよ」

その言葉を聞いたとき、私は本当に嬉しくなりました。

レッスンの時間だけで終わるのではなく、子ども自身が家でも動画を見て、自分から体を動かしている。誰かに強制されたわけではなく、「踊りたい」という気持ちから練習している。

それは、私たちが大切にしている主体性の芽そのものです。

さらに、お父様はこんなことも話してくださいました。

「それをしたいんだったら、宿題を早く終わらせてからやりなって言ったんです」

いわば、魔法の言葉です。

すると、その子は宿題にも取り組むようになったそうです。宿題を終わらせてから、ダンスの練習をする。勉強にも向かい、運動もする。ご家庭の中でも、とても良い循環が生まれているとのことでした。

「助かっています」

そう言っていただけたことが、私にとっても大きな喜びでした。

療育の現場で起きていることは、決してその場だけで完結するものではありません。そこで生まれた「楽しい」という感覚が、家庭に持ち帰られることがあります。

そしてそれが、自主練習につながったり、学校の宿題に向かうきっかけになったり、生活のリズムを整える一部になったりする。

ダンスそのものが目的でありながら、ダンスだけで終わらない。

ここに、ダンス療育の面白さと可能性があります。

子どもが何かを「やりたい」と思うとき、その気持ちは大人が思っている以上に大きなエネルギーになります。やらされているときとは、目の輝きも、体の入り方も、集中の仕方も変わります。

楽しいから踊る。

踊るから少し上手になる。

上手になるから、もっと見せたくなる。

見せたいから、また練習する。

その繰り返しの中で、子どもたちは少しずつ「自分でやる」という感覚を身につけていきます。

もちろん、子どもたちの興味関心を育むことは簡単ではありません。

大人が良いと思うものを用意しても、子どもが必ず興味を持つとは限りません。こちらが期待した反応が返ってこないこともあります。環境づくりも、声かけも、タイミングも、一人ひとりに合わせて考える必要があります。

だからこそ、私たちは難しいことに挑戦しているのだと思います。

ただ運動を教えるだけではない。

ただダンスを覚えてもらうだけではない。

その子の中にある「やってみたい」という気持ちに触れようとしている。

それはとても繊細で、時間のかかる関わりです。

でも、その小さな火が灯った瞬間、子どもたちはこちらの想像を超えて動き出します。家で動画を見ながら練習したり、発表に向けて頑張ったり、宿題を終わらせてから踊ろうとしたりする。

その姿を見るたびに、私は改めて思います。

子どもの主体性は、大人が引っ張り出すものではなく、子どもの中にある「好き」と出会ったときに育っていくものなのだと。

私たちにできることは、その出会いの場をつくることです。楽しいと思える曲を用意し、安心して踊れる環境を整え、発表という目標をつくり、できたことを一緒に喜ぶ。

そして、子どもたちが自分から一歩踏み出す瞬間を見逃さないこと。

ダンス療育の中で育っているのは、振り付けを覚える力だけではありません。リズムに合わせて動く力だけでもありません。

「もっとやりたい」

「見せたい」

「できるようになりたい」

そんな気持ちが、少しずつ育っています。

そしてその気持ちは、レッスン室を越えて、家庭へ、学校へ、日常へと広がっていくことがあります。

子どもが自分から踊り出すとき、そこには未来につながる小さな主体性が生まれています。私たちは、その小さな火を大切に育てていきたいと思っています。

 
 
 

最新記事

すべて表示
力を教える前に、感覚を育てる療育

子どもが「そんなつもりじゃなかった」と言うとき、大人はつい「もっと優しく」と言いたくなります。でも本当は、その子は優しくしたくないのではなく、自分の力が相手にどう届いているのかをまだ感じ取れていないだけかもしれません。力加減は、言葉で教えるものというより、身体で少しずつ覚えていくものなのだと思います。 トレーニングの中で、「うまくいった対応事例」や「成功事例」をご紹介します。 その中でもよく出てく

 
 
 
挨拶は、療育トレーニングの最初の一歩である

練習は、最初の動きから始まるのではない。実はその前に、もう始まっている。相手の目を見て、声を出し、「よろしくお願いします」と伝えるその一瞬に、その人の姿勢も、集中も、場への敬意も表れる。技術を磨く前に、まず整えるべきものがあるのだと思う。 挨拶は、トレーニングの最初の一歩である 今日のトレーニングでも、最初に必ず確認したいことがある。 それは、レッスンメニューの内容や目的だけではない。 何のために

 
 
 

コメント


bottom of page