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三歳の男の子が教えてくれた、支援のいちばん大切なこと

子どもが変わる瞬間には、いつも静かな熱があります。大きな奇跡のように見えるけれど、実際には、椅子に座れたこと、声が出たこと、先生の言葉を聞いて動けたこと——そんな小さな「できた」が積み重なって、ある日ふと周りの大人を驚かせるのです。そしてその成長を、誰かが自分のことのように喜べる場所には、不思議なくらい前向きな空気が流れはじめます。


プラスの空気が流れる場所

半年前、三歳の男の子がうちに通い始めてくれました。

最初に来たときは、発語はほとんどありませんでした。椅子に座っていることも難しく、自分の思うままに動きたい、やりたいことだけをやりたい、という状態でした。

もちろん、それが悪いという話ではありません。

三歳という年齢で、まだ言葉でうまく伝えられないこともある。自分の気持ちを整理できないこともある。やりたいことができなかったときに、気持ちがあふれてしまうこともある。

でも、支援の現場では、その子の「今」を丁寧に見ながら、少しずつ関わっていきます。

無理やり座らせるのではなく、座れる時間をつくる。言葉を急がせるのではなく、伝えたい気持ちが外に出てくる瞬間を待つ。できないところを見るのではなく、できる芽を見つけて、そこに光を当てていく。

そして先日、その子の様子を見たときに、正直、驚きました。

しっかり椅子に座っていたんです。

先生が「これわかる人、はーい」と声をかけると、反応する。先生が「それ、やってみよう」と言うと、ポーズをまねしてやってみる。次の指示も聞いて、行動に移すことができている。

ただ座っているだけではありません。

ちゃんと人を見ている。ちゃんと聞いている。ちゃんと参加している。行動観察の中で、その成長がはっきり見える状態になっていました。

そして発語も出ていました。

半年前にはなかったものが、そこにありました。言葉として、反応として、姿勢として、その子の中から表に出てきていたのです。

これは本当にすごいことです。

でも、僕がそれ以上に嬉しかったのは、その子を支援しているスタッフの反応でした。

その先生が僕のところに来て、「〇〇くん、ここができるようになったんですよ。先生、すごくないですか」と、自分のことのように嬉しそうに伝えてくれたんです。

その瞬間、僕は「ああ、これだな」と思いました。

子どもの成長を、先生が本気で喜んでいる。できたことをちゃんと見つけて、それをお母さんとも一緒に喜ぶ。その喜びが子どもにも伝わる。すると子どもは嬉しくなって、もっとやってみたくなる。

この循環が生まれているんです。

子どもができるようになる。先生が喜ぶ。親御さんも嬉しい。子どもはもっとやりたくなる。先生はさらにその子をよく見ようとする。支援の質が上がる。するとまた、子どもが伸びていく。

こういうプラスのスパイラルが、ぐっと上がっていく感覚があります。

僕は、こういう空気が大好物です。

支援というのは、技術だけでは成り立ちません。もちろん知識も大切です。方法論も必要です。観察力も、計画も、関わり方の引き出しも大事です。

でも、それだけでは足りない。

目の前の子が少しでもできるようになったときに、それを本気で喜べるかどうか。昨日より少し座れたこと、少し声が出たこと、少し人の言葉に反応できたことを、「それはすごい」と心から思えるかどうか。

そこに、支援者としての伸びしろがあると思っています。

子どもの成長を喜べる先生は、伸びます。

なぜなら、その先生は子どもを見ているからです。できなかったことばかりを数えるのではなく、できるようになったことに気づける。小さな変化を拾える。成長の芽を見逃さない。

そして、その喜びを周りに伝えられる。

これはとても大切な力です。

「できました」と報告するだけではなく、「すごくないですか」と嬉しそうに言える。その温度が、教室の空気を変えていきます。親御さんの気持ちも変えていきます。そして何より、子ども自身の気持ちを変えていきます。

子どもは、自分が見てもらえていることを感じます。

できた瞬間に、大人が嬉しそうな顔をしている。自分の行動に意味があったんだと感じる。自分はできるかもしれない、もう一回やってみようかなと思う。

この「もう一回やってみよう」が、成長のエンジンになるのだと思います。

もちろん、毎日が順調に進むわけではありません。座れない日もある。声が出ない日もある。崩れてしまう日もある。思うようにいかない日だって、たくさんあります。

でも、だからこそ、小さな成長を見つける目が必要です。

できなかった日に落ち込むだけではなく、今日できた一瞬を拾う。五分のうち一分でも座れたなら、その一分を見る。声にならなくても、伝えようとした表情があったなら、そこを見る。

支援は、その積み重ねです。

三歳のその子は、まだまだこれからです。

でも、半年前の姿を思い出すと、今の姿には本当に大きな意味があります。椅子に座って、先生の声を聞いて、ポーズをまねして、発語が出ている。その一つひとつが、その子の未来につながっている。

そしてその未来を、一緒に喜んでくれる先生がいる。

これは、本当に理想的な環境だと思います。

成長は、子どもだけに起きるものではありません。

子どもが伸びると、先生も伸びます。先生が喜ぶと、親御さんも安心します。親御さんが安心すると、子どももさらに落ち着きます。そうやって、関わる人たち全員の中に、前向きな循環が生まれていく。

支援の現場で大事なのは、この循環をどうつくるかです。

何か特別な魔法があるわけではありません。目の前の子をよく見ること。できた瞬間を逃さないこと。その成長をちゃんと喜ぶこと。そして、その喜びを子どもにも、親御さんにも、仲間にも伝えていくこと。

それだけで、場の空気は変わります。

プラスの空気が流れはじめると、子どもたちは変わっていきます。先生たちも変わっていきます。「もっと見たい」「もっと関わりたい」「もっと伸ばしたい」という気持ちが自然に生まれてくる。

僕は、そういう場所をつくりたいと思っています。

子どもができるようになることを、ただ成果として扱うのではなく、みんなで喜べる場所。先生が子どもの成長を自分のことのように感じられる場所。親御さんが「見てもらえている」と安心できる場所。

三歳の男の子の成長は、そのことをあらためて教えてくれました。

椅子に座れたこと。声が出たこと。先生の言葉を聞いて動けたこと。それは小さな一歩に見えるかもしれません。

でも、その一歩を本気で喜べる大人がいるなら、その子の世界は少しずつ広がっていきます。

そしてその広がりの中で、子どもも、先生も、親御さんも、一緒に前へ進んでいくのだと思います。

 
 
 

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