top of page
検索

体力テスト:記録が2倍、3倍になる怒らずに導く体育指導

子どもが投げ方を間違えたとき、私たちはつい「違う、そうじゃない」と言ってしまう。でも、その子は本当に間違えているのだろうか。肘を上げようとして、違う方向に腕が動く。それは失敗ではなく、体がまだ知らない感覚を探している証拠だ。投げることは楽しいはずなのに、多くの子どもたちが体力テストのソフトボール投げで記録を伸ばせずにいる。それは才能の問題ではない。ただ、体の使い方を丁寧に教わる機会がなかっただけなのだ。

投げることの土台を、もう一度つくる

ソフトボール投げやハンドボール投げ。体育のテストで目玉種目とされるこの競技で、記録が思うように伸びない子どもは少なくない。その理由は、技術以前にある。基礎となる体の動かし方を、誰も丁寧に教えていないからだ。

私たちは「投げる」という動作を当たり前のように捉えがちだが、それは複雑な全身運動だ。足の使い方、体重移動、肘の位置、リリースポイント。それらすべてが連動して初めて、ボールは遠くへ飛ぶ。

だから、まずは「投げることが楽しい」という感覚を取り戻すことから始める。

両手で投げる、下から投げる

最初のステップは、両手でボールを投げることだ。片手にこだわる必要はない。大事なのは、投げる動作そのものに慣れること。体を動かして、ボールが手を離れて飛んでいく感覚を味わうこと。

そこから少しずつ、投げ方を変えていく。

「まずは下から投げてみよう」

「次は足も動かしてみよう」

「今度は腕の方向に向かって投げてみようか」

「じゃあ、頭の上から投げてみよう」

こうして投げる角度や方向を変えると、自然にリリースポイントが変わってくる。子どもたちは体を通して、「こうすると飛ぶ」「ここで離すと上に行く」という感覚をつかみ始める。これが、体を使う練習の核心だ。

横向きから投げる—体重移動の発見

両手投げに慣れてきたら、次は横向きの姿勢で投げる練習に入る。

「体を横に向けて、そこから投げてみよう」

この姿勢が、多くの子どもにとって最初の壁になる。横を向くと、どう力を入れていいかわからなくなる。腕だけで投げようとして、記録が伸びない。

ここで大切なのは、「体を引く」動作を意識させることだ。横向きの姿勢から、体を回転させながら前方へ投げる。その動きの中で、全身の力がボールに伝わる。

そして、もうひとつ重要なポイントがある。肘の位置だ。

「肘を上げて」と言われたとき、子どもは何を考えているか

肘が低いと、ボールは遠くへ飛ばない。だから私たちは「肘を上げて」と指導する。

すると、子どもたちは一生懸命に肘を上げようとする。でも、その方向がバラバラなのだ。真上に上げる子、横に上げる子、前に突き出す子。

そのとき、私たちは怒ってしまいがちだ。「違う、そうじゃない」と。

でも、それは間違いではない。

子どもは「上げる」という言葉を理解して、自分なりに体を動かそうとしている。ただ、どの方向に上げれば力が伝わるのか、その感覚がまだ体に入っていないだけだ。

だから、怒らずに導く。

「いいね、上げようとしてるね。じゃあ、この辺りに肘を持ってきてみようか」

「こっちの位置の方がやりやすいかもしれないよ」

こうやって、具体的な位置を示しながら、体の使い方を一緒に探していく。すると、子どもは自分の体で「ここか」と気づく。その瞬間、記録は2倍、3倍と伸びる。

スモールステップで、成功体験を積み重ねる

投げる力は、才能ではなく技術だ。そして技術は、丁寧に教えれば誰にでも身につく。

大切なのは、一気に完璧を求めないこと。まずは両手で投げる。次にリリースポイントを変える。それから横向きの姿勢を試す。肘の位置を調整する。

ひとつひとつのステップを小さく刻み、そのたびに「できた」という感覚を味あわせる。そうすれば、子どもたちは投げることに自信を持ち始める。

記録が伸びないのは、体が弱いからでも、センスがないからでもない。ただ、体の使い方を知らなかっただけだ。そして、その使い方は教えられる。

 
 
 

最新記事

すべて表示
療育の楽しさが生み出す子どもの主体性

何かが「好き」という純粋な気持ちは、時に私たちの想像を超えるほどの力を秘めています。それは、苦手だったことに向き合う勇気をくれたり、退屈だった日常を輝かせてくれたりする、不思議なエネルギーの源です。もし、子どもの「やりたい」という小さな炎が、家庭や学校での学び、そして自分自身を成長させる大きな力に変わっていくとしたら?これは、ダンス療育という現場で生まれた、ささやかで、しかし確かな希望の物語です。

 
 
 
エンタメ療育で広がっていく未来

私たちは知らず知らずのうちに、他人の可能性に「こうあるべきだ」というレッテルを貼っていないでしょうか。障がいがあるから、こういうことは難しいだろう。この特性があるから、きっとこうなるはずだ。しかし、一人の少女が、その思い込みがいかに脆く、そして人間の成長がいかに予測不可能であるかを、身をもって教えてくれました。それは、あるダウン症の女の子との出会いから始まった物語です。 今から10年以上前、私が東

 
 
 
合宿で伸びる、自立への3日間

夏の朝、荷物の大きさと同じだけ不安を抱えた子どもが、初めて家の外で眠る準備をしている。たった3日間の宿泊が、能力だけでなく関係性のほうの筋肉を目覚めさせることがある。自立は一足飛びではなく、共同生活と身体のリズムの中で育つ——そのステップが、舞台とダンスの稽古の合間に静かに起きている。 毎年、夏に東京で発表会を行う。その準備として2泊3日の合宿を組み、今年は「サマーキャンプ」という名でやる。これが

 
 
 

コメント


bottom of page