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療育の導入で本当に大切にしていること

9月12日
読了時間: 5分

初めての場所で、知らない大人に囲まれて、「さあ、ひとりでやってみよう」と言われたら、大人でも少し身構えるものです。まして三歳の子どもにとって、お母さんから離れることは、小さな冒険ではなく、とても大きな出来事です。だから私たちは、無理に離すことから始めません。まずは「ここは安心していい場所なんだ」と、子どもの心が感じられるところから始めます。


母子分離が難しい。

療育の現場では、とてもよくあるご相談のひとつです。通い始めたばかりのお子様が、お母様から離れられない。部屋に入ることを嫌がる。スタッフが近づくと緊張してしまう。そういう姿は、決して珍しいものではありません。

今回ご紹介するのは、三歳のお子様のケースです。

最初はやはり、不安が強くありました。いつもと違う環境。知らない場所。知らない先生たち。周りには他の子どもたちもいる。そんな中で、お母様から離れることは、その子にとって大きな負担だったのだと思います。

でも、ここで大切なのは、「離れられない子」と見ることではありません。

その子は、まだその場所に気持ちが入る準備ができていなかっただけです。

不安がある状態で、いきなりレッスンに参加することは難しい。先生との関係もまだできていない。プログラムが楽しいものなのかも、安心できるものなのかも、本人にはまだ分からない。

だから私たちは、まずスモールステップを丁寧に作っていきます。

最初から母子分離を目標にして、無理にお母様と離すことはしません。まずは「お母さんと一緒でいいよ」というところから始めます。安心できる人がそばにいる状態で、環境に慣れていく。そこが第一歩です。

お母様と一緒にいることで、子どもの表情が少しずつやわらぎます。安心が生まれると、目の前の課題や遊びにも少しずつ興味が向き始めます。

先生たちに対しても、最初から距離を詰めることはしません。いきなり関わろうとすると、子どもにとっては怖さにつながることがあります。ですから、最初は少し距離を取りながら、お母様と遊んでいるところに、自然な形で少しずつ介入していきます。

「この先生は怖くない」

「この場所は嫌な場所じゃない」

「ここで遊ぶのは少し楽しいかもしれない」

そういう感覚が、少しずつ積み重なっていきます。

この積み重ねが、母子分離の土台になります。

今回は、個別レッスンと小集団の環境を組み合わせながら進めていきました。まずは個別の場面で、安心して先生と関われるようにする。お母様がそばにいる状態で、プログラムに触れてみる。楽しいやり取りを経験する。

すると、少しずつ先生との関係ができてきます。

先生とのやり取りが楽しくなると、今度はプログラムそのものに興味が湧いてきます。プログラムに興味が出てくると、「お母さんがすぐ隣にいなくても大丈夫かもしれない」という感覚が育っていきます。

ここでも、急に離すことはしません。

最初はお母様がすぐ近くにいる。次に、少し後ろにいる。さらに、少し離れた場所から見守る。そうやって距離を少しずつ変えていきます。

子どもにとって大切なのは、「突然いなくなった」と感じないことです。

お母様が見守ってくれている。先生も安心できる。目の前の活動も楽しい。そう感じられるようになると、子どもは自然と自分の足で参加し始めます。

今回のお子様も、通い始めから一ヶ月経たないくらいで、母子分離で個別にも小集団にも楽しく参加できるようになってきました。

これは、単に「離れられるようになった」ということではありません。

安心できる環境の中で、人との関係が育ち、活動への興味が広がり、自分で参加する力が出てきたということです。

療育の導入部分は、本当に大切です。

最初の関わり方を間違えてしまうと、子どもにとってその場所が「怖い場所」「嫌な場所」になってしまうことがあります。反対に、最初に安心の土台をしっかり作ることができれば、その後の成長の幅は大きく広がっていきます。

私たちが大切にしているのは、まず安心できる環境を作ること。そして、その上でエンタメ性のある楽しい関わりを通して、子どもの世界を少しずつ広げていくことです。

子どもは、安心すると動き出します。

安心すると、見ようとします。聞こうとします。関わろうとします。挑戦しようとします。

だから、「できない」と見える行動の前に、私たちはいつもその子の気持ちを見ます。今、この子は不安なのか。まだ準備ができていないのか。何があれば安心できるのか。どのくらいの距離なら受け入れられるのか。

母子分離は、子どもをお母様から引き離すことではありません。

子どもが安心の中で、「自分で行ってみよう」と思えるようになるまでの過程です。

そのために、私たちは導入の部分をとても大切にしています。レッスンが始まる前の関係づくり。環境設定。先生との距離感。お母様との位置関係。小集団に入るタイミング。個別で深める時間。

こうした細かな部分を見ながら、その子に合ったステップを組み立てていきます。

他の場所では「なかなか中に入れない」「お母さんから離れられない」と言われるケースでも、丁寧に見ていくと、必ず理由があります。そして、その理由に合わせて関わり方を変えていくことで、子どもは少しずつ変化していきます。

大切なのは、焦らないことです。

そして、子どもが安心できる順番を大人が守ることです。

無理に背中を押すのではなく、歩き出せる土台を一緒に作る。そうすると、ある日ふと、子どもは自然にお母様の手を離して、先生の方へ、活動の方へ、自分から向かっていきます。

その一歩は、とても小さく見えるかもしれません。

でもその子にとっては、「ここなら大丈夫」と感じられた証です。そして療育において、その安心の一歩こそが、次の成長につながっていきます。

 
 
 

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